田園のかえる料理

こやまあきゆき

2006年10月19日 22:43

若い頃、まだコックとしてアルバイトだけで、見習い修行先を探していた20才前後の頃、1ケ月間のみの洗い場のバイトで、三条にあったパブ「田園」の調理場に行った。どうしても洋食・ましてフレンチの店の見習いになかなか入り込めなかった頃。ホテルやレストランの料理長も務めた市瀬料理長の面接で、コックになりたいなら見習いコックの方で採用するといわれた。パブのイメージでとまどっている私に、料理長の説明では、元々ボーリング場にレストラン・喫茶店などいろいろあったが、今再編の過渡期。もうすぐ別のビルにフレンチの店もオープンするし、今も準備の為に2人修行中だから、と、はれて?コック採用になった。とはいえ、1ケ月の間に洋食の店を探すつもりだっただけに、最初は半信半疑。そんな私に料理長は、フレンチのプロ用の大全集注文したから読みたいだけ読んだらいいと。・・・数日後30冊のすべてプロ用の専門者がドカンと更衣室に並んでいた。もともとデミグラスソースからドレッシングまで自家製。店のメニューに、フレンチの勉強の為と、エスカルゴにカエルまで登場した。出勤前に山ほど積まれた野菜を掃除しておくようにいわれ、始まってからもおおいそがしで、今から思うとあんなに野菜を毎日大量に使ったのは、田園が1番だったように思う。料理長は、フレンチを学びたい一心だった私に何かを伝えたかったのだろう。2年近くお世話になったが、新ビルの多くは当時「無印良品」になり、フレンチの店にはならなかった。私は、初心貫徹で、その後スペイン料理・フランス料理とコックの修業を続けるのだが、田園のスパルタ教育は、包丁の扱いほか、多くの事を習得できてその後の店で、早くにその仕事を任せてもらえる下地になった。また、市瀬料理長は、後黒豚料理の自分のレストランを開かれ、市場で再開してから何度か、あのおいしい味を堪能させていただいた。しかし「カエル」を料理する事は、二度となかった。

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